ぶとしの日記

ぶとしが生きていて思ったことを綴っていきます。

深堀りすること、裾野を広げること 少子化に関するシンポジウムに行ってきたよ

立教大学で行われたオルガンコンサートに行ってきました。パイプオルガンが新調されたようで、その記念コンサートだったみたいです。(下はその写真) 

http://instagram.com/p/oXi8TAHrks/

 

オルガンコンサートを聞いて帰る予定でいたら、こんなイベントをやっているのを発見。

http://instagram.com/p/oXkkRAnrmT/

 

少子化・生殖のゆくえ」 と、面白そうなテーマだったので覗いてみることにしました。対象に「一般市民」とあるし、無料だし。オルガンコンサートを終えてから行ったので基調講演は聞けなかったのですが、これがヒット!面白かったです。 

 

少子化問題に関して造形の深い研究者が3人話しをし、その話をふまえてコーディネーターを交えて4人でパネルディスカッションをするというものでした。会場からの質問は紙に書いて休憩時間に提出し、その紙をもとにパネルディスカッションが行われたので、聞きたかった質問の答えも聞けました。

 

ICレコーダーに録音をしていたわけではないので全てを正確に記載することはできないけれど、トピックベースで議論されていた内容を自分の意見を含めて紹介したいと思います。(あくまで、提示されたトピックに対しての私見を含んでいますので、講演をされた先生方や主催者の意図を表すものではないことをご承知下さい)

 

1.母子健康手帳を発行されると困る人もいる

人口問題の主要な問題ではないけれど、細部に潜んでいるというこの問題。虐待などで親から逃れている場合、住民票を移すと住所がバレてしまう。母子健康手帳を発行するためには住民票が必要だから、こういう状況にいる人は母子健康手帳の取得をためらうということが指摘されていました。

 

そもそも、定住しなくても生きていける今、住民票自体煩わしい気がしてるけれど、こういう問題があるってこと自体が発見でした。このことについて説明をされた先生は「行政のシステムが社会に追いついていない」という表現を使っていらっしゃいましたが、本当にそうだよなと思いました。

 

2.少子化は本当に問題なのか!?

よく、「世界では人口爆発が起こっていて世界で言う人口問題とは人口が増えすぎことを指す。世界目線で考えれば、日本の人口減少なんてたいした問題じゃないんだ」という意見があります。じゃあ「本当に少子化は問題なのか?」ということが問われます。

 

それについてある先生が、「それは難しい問題ですね。」と答えていらっしゃいました。私は、その答えに「へぇー!」と思いました。「難しい」という答えは、たいした意味のある答えじゃないと思うかもしれません。でも、専門家が「難しい」と答える問題は、おそらく、本当に難しいんです。

 

素人が「難しい問題」に出会った時に「考えが不足している」のか「本当に難しい問題」なのかの区別は極めて難しいです。だから、難しい問題だということが分かることにも意味はあると思っています。

 

ちなみに、難しいということを前提として、「だったら少子化のままいればいればよいのかと言えばどうだろう?世界の人口問題が大変だからといって日本だけ自己犠牲を払う必要もないんじゃないか。日本の人口減少も世界の人口増加も同時に落ち着かせて行くべき」というようなことをおっしゃっていました。

 

3.フランスのPACSは、実は日本の法律婚とあまり変わらない!?

欧州では婚外子が多いということが指摘されます。フランスのPACS制度を見習い、法律婚かどうかにとらわれずに子どもを産めるよう制度を柔軟にしていくことが重要だと言われています。

 

ただ、それに関する指摘で面白かったのが、「フランスのPACSやスウェーデンのサンボ(同棲カップルに結婚と同程度の法的保護を与える制度)」は日本の法律婚とあまり変わらない」という指摘です。

 

この記事(結婚と出産の国際比較)にも書かれていますね↓

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/note/notes1110a.pdf

 

私自身がこの制度の比較をしたわけではないので本当に日本の法律婚とフランスのPACSに差がないのかということはわかりません。けれど、もしこの指摘が本当であれば、 制度の内容自体が問題では無いという可能性があります。制度の中身よりもむしろ、(中身はほどんど変わらない)新しい制度を作ることによって「子どもを産むことを奨励します!」というメッセージを国として発信しすることが重要な可能性もあります。子どもを産む空気を作っていくということです。

 

私は少子化問題は社会の空気の影響も多いに受けていると考えています。「子ども産んだら大変そう」とか「教育費がかかるからやめとこう」とか「預けるところがなければ働けない」という子育てに対してネガティブなイメージが頭に染み付いているために、積極的に子どもを産まないということです。クールビズの掛け声によってみなネクタイを外したように、国のメッセージよって子どもを産むことが賞賛される様な文化になっていけば、少子化も徐々に解消されていく可能性があるかも、と感じました。

 

4.M字型カーブは本当に解消すべきなの!?

日本の女性は出産と同時に仕事を辞める傾向が大きいため、年齢別に就業率を表したグラフを作ると20代で高い就業率が子育て期でいったん落ち込み、また就業率があがっていくという「M字カーブ」を描いていきます。(イメージ湧かない方、M時カーブでぐぐってみてください)一方、欧米では出産を機に会社を辞めるということも少なく出産をしてすぐに働くので、日本のようにM字のカーブを描くことはありません。

 

だから、欧米のように働ける環境を作るべき(つまりM字カーブを解消すべき)という意見も多いのですが、ある先生の「 M時型カーブが残ってもいい。日本は子どもを大事にする国だという考え方があってもよい」という意見には唸らされました。

 

「日本は子どもを大切に育てる国だから、いったん仕事を休んでその後仕事に復帰するという国です」というスタイルはそれはそれでありだよなと思いました。とすると、M字カーブ自体が問題ではなくなってきます。

 

その話の中では、「もっとも、バリバリ働くべきだと考える人もいるから、それは批判すべきことではないし、素晴らしいこと。ただ、いろんな働き方があってもいい。女性のキャリア形成が、途中からでもはじまるものでもいい」ということが言われてました。

 

以前、ユニ・チャームが新卒社員の入社時期を30歳まで自由に選べる(子どもを産んでから働ける)とのニュースがでてましたが、年齢とくらべて社会経験が少ない人も、思い立った時からキャリアを積み重ねていける環境がもっと作られていけば良いと常々思っていました。なので、M時カーブの解釈には、納得させられました。

 

5.現在の少子化は意図したものだった!? 

最も驚いたのが、この話でした。1974年の人口白書は「人口増加への警告」を報じ、「少ない子どもを大切に育てていくべき」というメッセージを発信していたというのです。「避妊を実行しよう、という言葉があって、全社をあげて避妊運動に取り組んでいる住宅もあったという話が紹介されていました。

 

この記事でも紹介されていますね。

その5 出生率増加に足りないものは? | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト

 

ということは、今の少子化は完全に「政策が成功した結果」です。当時は、子どもを沢山産んで欲しくなかったと言うことです。

 

「その時になんなきゃわかんないこと」はほんと多いよねと思います。別の文脈で、「(高度経済成長期以降)核家族でやっていけると思ってみんな都会で頑張ってたけど、(今)ちょっと厳しいなと気がつき始めた」との話もありましたが、1974年当時、少子化がこれほど問題になると思ってなかったんだろうと思います。

 

 

完全にたまたまであったシンポジウムでしたが、こんな面白い話があるんだったら早く知りたかったなと思います。専門的な話も多いでのですが、人口問題のように一般の人もとっつきやすいテーマであれば全くわからないってこともありません。

 

し・か・も!

 

今回は学会の研究会?のような位置付けでしたが、ある程度知識がある人がいるという前提で話が進められていました。なので、概論だけでなく、要点がピュッピュッとつまっている話を聞けてお得な気分でした。研究者が集まる場をクローズにすることは議論のクオリティを維持するためにとても重要だと思うけれど、一方で、こうしたイベントに一般の人を呼びこむことの価値も大いにあると感じました。

 

だって、一人ひとりがその分野への興味をもってくれることは、学問の世界の人にとっても悪いことではないし。深堀りすることと同時に、裾野を広げることも大事だなと思います。

 

 と、いうことで、以下の本も読んでさらに勉強してみたいと思います。今から楽しみ!

2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書)

2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書)

 

 

ではでは〜。